はじめにみどころ

 

ある日。江戸の有力者の家に、江戸で歌舞伎者と名を馳せる男から招待状が届く。
招待状には、「私の屋敷で、江戸で最も早い花見を開催いたします。是非、お越しください。」との文面が。
3月初旬に江戸で花見とは気が早いと思い、半信半疑でその男の屋敷を訪れてみると、
「庭にある桜はまだ咲いていないが、屋敷の中に桜が咲き乱れている」と屋敷の主人が言う。
この歌舞伎者、今度は一体何を歌舞くつもりなのか、と疑いながら、屋敷に足を踏み入れると…
回廊にずらっと並べられた着物には全てに桜の柄があしらわれており、更に進んでいくと、
切子や和紙、友禅など、日本の美を代表する品々に様々な趣向が凝らされ、
まるで桜が満開となったかのようである。
そこは、まさに江戸で最も美しい、アートな花見の世界が広がっていた…。

はじめにみどころ

江戸初期、伊勢商人によって日本の大都市・江戸で売られた「松阪木綿(まつざかもめん)」は、
質の良さと目を惹く柄で、またたくまに江戸っ子の間で人気を呼び、
特にその粋な縞柄(しまがら)は、倹約令で制限されていた江戸庶民の心を捉え、
江戸の人口が100万人と言われていた当時、50万反以上の売り上げがあったといいます。
また、松阪商人「三井高利(みついたかとし)」の江戸出店「越後屋(えちごや)」(現在の三越の前身)の勢いも
松阪木綿」を有名にする一躍を担いました。
そんな歴史からも、日本橋と非常に関係の深い、三重県指定の伝統工芸である「松阪木綿」にて入り口を飾る大暖簾を制作し、
皆様をお出迎えしております。

履物(はきもの)はその場所の境界を表し、“こちら”と“あちら”を結びつけ、
物語と物語が交差する場所となり、交わりを予感させます。

本展では、履物を履く、脱ぐ、替える、という動作を
人間の意識を切り替える“きっかけ”と考え、
各展示エリアに合わせた「履物」という作品を添えて、
まるでそこに足を通して、その世界を歩くような体験をしていただきます。

それぞれの展示作品に合わせた「履物」にもストーリーや意味がありますので、
各エリアでの説明と合わせてご鑑賞ください。

天たたき朱漆綴れ 銀花緒付き 胴張り両歯下駄[写真左・男性用]
天たたき黒漆 銀花緒付き 両歯下駄[写真右・女性用]

この履物を見れば、この主人の“人柄”と“好み”が感じられ、
今から踏み入れる世界観を一気に感じる事ができます。
男性の方が華やかなのは、本来古い時代には男性はとても豪華な装いでした。
女性は、艶やかで男性を立てる一方、女性ならではの魅力を表現しています。

日本橋未来予想絵図(みらいよそうえず)」は、江戸時代の文化を語る貴重な資料である
江戸日本橋を描いた長大な絵巻「熈代勝覧(きだいしょうらん)」が、
未来の日本橋の街をモチーフに復活します。

五街道の基点となった初代の日本橋が完成して約400年。
大規模複合開発[日本橋室町東地区開発計画]が完了する本年、
新たなスタートを踏み出す日本橋をお祝いする意味を込め、
日本画家・西野正望(にしのせいぼう)氏が新しい「熈代勝覧」を
本展覧会の会場内で公開制作いたします。

手漉き和紙に三重県の「鈴鹿墨」を用い、長さ12m32cm×高さ45cmのオリジナルサイズを忠実に再現。
LIVEペインティングならではの迫力と、日々刻々と変化する「熈代勝覧」の制作過程をリアルタイムでお楽しみいただけます。


西野 正望:公式サイト
http://enjoy1.bb-east.ne.jp/~nishino


和紙水晶入り草履

神の場、浄化された聖地を表しています。
“人ごと”を超えた“神ごと”への渇望を実現する場を自分の足元に置く、
絶対に安心な場から見るその奇跡こそ、最も美しさを持つものとなるでしょう。

木村の真骨頂となる最新作のアートアクアリウム作品「江戸桜リウム(えどざくらりうむ)」が登場。
通常の「アートアクアリウム展 〜金魚シリーズ〜」では見ることができない、『江戸桜ルネッサンス』限定の特別作品です。

江戸桜リウム」は、「江戸切子(えどきりこ)」のグラス約1,000個から成る
高さ約2.5m、直径約4mの巨大「江戸切子シャンデリア」と
水面に舞い散った桜の花びらをデザインした作品「サクラリウム」からなる複合作品です。
サクラリウム」には、桜錦や桜琉金、桜和金など、桜にちなんだ品種の金魚が優雅に泳ぎ、桜が舞い散る様子を表現しています。
江戸切子」の本来もつ美しさを存分にお楽しみいただける作品です。

江戸桜リウム」最大の見所は、照明演出により、「江戸切子シャンデリア」や「サクラリウム」、
そして、作品奥の壁面に埋め込まれた江戸切子が施された硝子までもが桜色に染まる瞬間です。
豪華絢爛でありながら儚い満開の桜を表現します。

数寄屋草履 和紙ねじり花緒付き

お茶席などに向かうときに利用される履物で、庭に出て桜を楽しむ風情を表現しました。
数寄屋草履〉は、屋敷内の美しく掃き清められた場所に、
不浄なものを持ち込まないために主人が用意する履物です。
全てを竹で作る事が通常ですが、ひねった浄化を意味する、和紙の花緒を使った
“お〆(しめ)縄”の意匠で結界内の守られた場所を表し、この「江戸桜ふぶき(えどざくらふぶき)」の庭が安心で浄化された所である事をより感じていただく趣向です。
二足並べるのではなく、三足にする事で、大勢で楽しむイメージを盛り込みました。

江戸桜ふぶき(えどざくらふぶき)」は江戸時代に栄え、東京都指定工芸品である硝子細工「江戸切子」の技を使い、
精巧な硝子の桜の花びらを1,000枚制作。

これらの硝子細工とプロジェクションマッピングなどの最新の演出技術を駆使し、
満開の桜の木が風に吹かれ、桜の花びらが吹雪のように舞い散る様を表現します。
伝統工芸の技と最新映像の技が融合して生まれた、幻想的な美しい映像インスタレーションをお楽しみください。

本作品の前にある畳のステージでは、伝統芸能も披露される予定です。

数寄屋草履 和紙ねじり花緒付き

贅沢を尽くし、技を極めた着物の回廊
和桜並木道(わざくらなみきみち)」の入り口には、
最も格調のある履物を置く事で、この場所が特別である事を表現しています。

和桜並木道(わざくらなみきみち)」は、日本の美を代表する着物の中から、桜柄で構成される着物を集め、
古くは江戸時代の着物から現代の一流作家が手掛けた着物までを網羅して回廊に展示し、
ライトアップすることで、桜並木を出現させます。

中でも、江戸時代の桜柄の着物3点は、非常に希少価値が高い作品です。

江戸時代中期までは、花見は桜より早く開花し、咲き誇る期間が長い梅を愛でる文化が主流であったためです。
なお昨今、桜の代表とされる「ソメイヨシノ」は、江戸時代末期に出現し、日本全国に広まった歴史があります。

伊賀組紐の境界線

本展覧会では存在する物のここ彼処に、伝統の技が生きています。
展示作品との間に引かれる境界にも、〈伊賀組紐〉を用いております。
この展覧会の為にオリジナルで作った組紐は、計算づくでは無い、
偶然の産物として生まれた全く新しい組み方を生かしたものです。
美しい配色を施した〈伊賀組紐〉の魅力を、存分にお楽しみください。

弦月朱漆地

この履物は、古くは家の主人(亭主)の主たる役割である神事に使われたものです。
主人は、日が暮れると庭の灯篭に火を入れます。
その時のためだけに主人が使うためだけに置かれるものです。
“弦月”の名は、月が満ち欠ける様子を漆で表した意匠を指しています。
一人で輝く事の無い照らされる月です。


伊勢型桜の間(いせかたざくらのま)」三重県鈴鹿市指定の伝統産業であり、重要無形文化財指定の「伊勢型紙」を使い、
影絵を生み出すアート作品です。

伊勢型紙」は、江戸小紋などの型染めに用いられてきました。
伊勢型紙」の中でも、明治時代から昭和時代初期の桜柄の型紙だけを展示し、型紙に光を投射することで、
様々な種類の桜が浮かび上がります。
一風珍しい、モノクロのお花見をお楽しみください。

花見和紙草履

この和紙で作られた履物は、可能性が無限である事をイメージするものとして
用意しました。
色とりどりの和紙が見る人々によって、どのようなもの・場所に転化されて行くのか、
その発端になる事をイメージしています。
美しい色の三本の花緒を合わせたデザインは、「桜和紙の門(さくらわしのもん)」に
相応しい、会場ゲートのイメージを思い起こさせます。

桜和紙の門(さくらわしのもん)」は、江戸時代より360年続く日本橋の和紙問屋「小津和紙(おづわし)」より、
京都で作られた桜柄の高級手漉き和紙を集め、桜が咲き乱れる空間を演出します。

色鮮やかな桜が咲き誇り、日本の春の訪れを感じさせてくれる作品です。

駒下駄

特別にしつらえられた「夜桜宴の間(よざくらうたげのま)」に
駒下駄〉を立てかけて置く事により、
主人が中にいる事、挨拶をしている事を見立てています。
主人が心入れのある、目を行き届かせて、お客様を待ちわびている様子を表しています。

本展覧会のために、夜桜の絵柄の“摺型友禅”、“京鹿の子友禅”、“手描き友禅”の3点の着物を特別にあつらえました。
それぞれの着物の織物で壁一面を装飾した開放的な空間「夜桜宴の間(よざくらうたげのま)」、3部屋が登場。

各部屋には1種類ずつ、“伊賀焼”(土楽窯)や“清水焼”(六兵衛窯)の陶器、“京漆器”(象彦)の
漆器のフルダイニングセットを展示し、アート性の高い花見空間を演出します。

江戸桜ルネッサンス×桶重

VIP席である、「夜桜宴の間」にて日本酒を冷やすのに使われているのは、
三重県指定伝統工芸品である関の桶で作った酒クーラーです。
本展覧会の木村英智プロデューサーが三重県を訪問時に、たまたま立ち寄った
関宿の〈桶重(おけじゅう)〉の魅力に惹かれて、その場で制作を依頼しました。
きつね桶の形をモチーフにしたのは、もうほとんど注文が無く、
作る機会が無いきつね桶の技術を忘れないようにと、暇を見つけて職人が作ったものが
桶重〉に転がっていました。
その逸話に興味を持ち、サイズなどを酒クーラー向けに細かく特注をして、
でき上がったものです。

夜桜宴の間」は、19:00以降、1日6組限定の予約制VIP花見席となります。
展示作品「江戸桜ふぶき」もご覧いただける花見の一等席で、三重県の漁港から直送された伊勢海老や鮪など、とれたての様々な海産物や、
京つけもの「大安(だいやす)」のお漬物などのお料理を、お酒と共にお楽しみいただけます。
お料理は、昼間まで展示されていた貴重なダイニングセットに盛り付けられ、まさに京都と三重の伝統工芸・食文化を一度に堪能できる夢の空間です。

〈「夜桜宴の間」花見席 超VIPプレミアムチケット〉は、セブン-イレブン【セブンチケット】での限定販売です。
詳しくは、こちらの【チケット】ページをご覧ください。

五色おべた

“おべた”は子供の成長を祈り、目の前の道が平穏である事を願い、
板を敷き詰めるごとく思いで履かせる“板下駄”です。
“五色”の色豊穣を祈り、豊かさをいただき、
日本人の心の拠り所の一つである可愛さ(小ささ)を表現しています。
和菓子とお茶から成る「五日桜の間(いつかざくらのま)」に合わせ、
五種類の和菓子が並ぶ、可愛らしさをイメージしました。

花見の席には欠かせないお茶と和菓子においても、お茶会をしながらにして、
日本古来の美意識を楽しむ粋な時間を提供いたします。
五日桜の間(いつかざくらのま)」では、本展覧会のために、
京菓子司「老松(おいまつ)」、御菓子司「亀末廣(かめすえひろ)」、
老舗茶舗「福寿園(ふくじゅえん)」の老舗3ブランドが初めてコラボレーション。

和菓子とお茶から成るお茶席を通し、
儚い季節の変化を表した旧暦“二十四節気七十二候(にじゅうしせっきしちじゅうにこう)”を
テーマにした、オリジナルの作品を展示いたします。
春が訪れるまでに季節が刻々と移り変わる様を、「五日桜の間」にて、再認識いただければ幸いです。

五日桜の間」では、「亀末廣」が干菓子で桜が咲き誇る様子を表現。
老松」は、生菓子で、本展覧会オリジナルの創作和菓子を制作し、「福寿園」はお茶で、季節の世界観を表現します。

現在では四季が一般的ですが、かつて日本には、
春夏秋冬を二十四の節気(立春・雨水・立夏な
ど)に分類し、二十四節気をさらに五日ずつ3
つに分類し、七十二の季節に分けて「七十二候」
と呼び、季節の移り変わりを感じていました。

五日桜の間」で表現された世界観を、お楽しみいただけるプレミアムチケットを1日200名様限定で販売いたします。
本展覧会のために京都の老舗3ブランドがコラボレーションしたオリジナルのお茶席セットで、
亀末廣」の干菓子、「老松」の生菓子、「福寿園」のお茶師が手づから煎れた“お茶”が同会場内に設けられたお茶席スペースで味わうことができます。
お茶席セットは、本展覧会中に到来する“二十四節気七十二候”に合わせ、5日ごとに内容を変えてご提供いたします。

〈「亀末廣」&「老松」&「福寿園」お茶席 VIPプレミアムチケット〉は、セブン-イレブン【セブンチケット】での限定販売です。
詳しくは、こちらの【チケット】ページをご覧ください。